建築的象徴と概念の融合のための協働イノベーション
1968年、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエが設計したベルリン国立美術館の一部である「新ナショナルギャラリー(Neue Nationalgalerie)」は、急進的な新しいコンセプトと洗練された構造的ディテールを導入することで、明確な一歩を踏み出しました。2015年に開始された「20世紀美術館」のコンペで、Zaha Hadid Architectsは、構造的・建築的表現を生み出すために、新しい技術の進歩を適用することで、先鋭的なアプローチを再構築しました。
ロンドンのco|deに所属するZaha Hadid architectsは、2015年にArchitectural Association(AA)で行われたLuca Frattari博士の講義をきっかけに、Altair HyperWorksプラットフォームに関心を持ち、Altairの支援のもとHyperWorksのユーザーインターフェースに慣れ親しみ、トポロジー最適化を可能にする設計ツールのプラグインを作成しました。有限要素解析の前処理であるメッシュ生成にはAltair HyperMesh™を、後処理と可視化にはAltair HyperView™を使用しています。高度な解析と最適化アルゴリズムを提供する構造解析ソルバーAltair OptiStruct™は、革新的で軽量かつ構造的に効率的な設計の開発基盤を形成しました。「HyperWorksから最適化の結果が返ってくると、それに基づいて次の設計プロセスが始まります。HyperWorksの結果はベースのようなもので、私たちはその上に、結果に基づいて実際に開発された設計言語を用いて作業を行います。設計図として使う地図のようなもので、製造しやすいように形状を再現しています」と、Zaha Hadid Architectsのデザイナーでco|deグループのメンバーであるVishu Bhooshan氏は述べています。
シミュレーションで限界に挑む
3週間のコンペ期間中、各チームはさまざまな角度から案を検討しました。デザインの基礎となったのは、著名な建築家ル・コルビュジエが設計した有名な「ドムイノハウス」の先行研究です。同じアイデアをより大きなスケールで適用し、歴史的な構造から得られる荷重を利用して、柱のグリッドはそのままに、スラブと柱の最適化のための力を適用しました。軽量で構造的に優れたデザインと製造という設計原則に従い、HyperWorksを使用して材料の使用量を最適化し、熱線切断を用いて製作することを合理化しました。
Zaha Hadid氏の提案、新ナショナルギャラリーと周辺環境との対話性をつくりだすことが一等地としてあるべき明確な機能である、を建築表現で十分に満たしています。設計コンセプトは、柔軟で効率的かつ機能的なフレームワークと、ガラス張りの外周部を組み込んだ空間構成を組み合わせたもので、一貫性のある現代アートの展示・制作と社会的交流を促進するユニークな透明な空間となっています。
提案されている立面図は、新ナショナルギャラリーの軽量な外観を発展させたものと解釈できます。外観の構造的なプロポーションを維持し、コーナーをオープンにすることで、このようなユニークな場所での存在を認識し、尊重し、理解するランドマークとしての提案を定義しています。内部では、2列目の円柱がギャラリーと展示ゾーンを区分けし、合理的な展示スペースを明確に構成しています。ギャラリーでは、内部の回遊性と他のギャラリーへの眺望を論理的に構成しています。
最軽量の設計ソリューション: シンプルでありながら洗練されたスタイル
この建物のシンプルな形状は、構造解析とその他のパラメータが変換によって、つくられています。幾何学的なパターン化は、所定の性能目標の範囲内で材料の重複を排除することで材料消費を最適化し、自然界の生物と同じ構造論理に従った効率的なリブパターンを生成することでコンクリート構造の重量を減らし、結果として可能な限り軽量なデザインを実現しています。
構造的な力の幾何学的表現と、先進のファブリケーションシステムと技術を統合し、建築物全体の軽さと動きのバランスがとれた、床と屋根が層になった効率的かつ有機的な構造を生み出しています。
将来の可能性
この設計案は受賞作品には選ばれませんでしたが、その建築理念は、Altairの最先端のシミュレーション技術との連携を強化した結果の構造的配置に表れています。将来、キュレーション企画やアートの展示、プログラムの変更や来場者の状況変化に対応できる柔軟なギャラリーでありながら、明確でユニークな外観の表現も発揮します。
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